読めば読むほど心当たりが出てくる不思議【予想どおりに不合理】(13冊目)

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予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」
ダン・アリエリー(著)、熊谷淳子(訳)
早川書房 2013/8/25 第一刷発行

本書を特にオススメしたい人

  • 自分の行動や習慣、考え方を変えてみたい方
  • 経済学や心理学に興味がある方
  • マーケティングに興味がある方、携わっている方
  • 雑学に興味がある方
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目次

はじめに(本書の紹介)

本書はタイトルにもある通り『行動経済学』を実験例と共に述べた1冊です。

では、そもそも行動経済学とは一体何なのか。

まず、経済学はその名の通り『経済活動の仕組み』等を研究する学問です。

その研究結果から経済活動の予測等を行うことが出来ますが、実社会ではそれに沿わない”合理性に欠いた結果”が得られることがあります。

行動経済学はこういった『合理性を前提とした経済学』に『ヒトの心理』を付け加える研究手法・学問になります。

合理性やら何やらと書きましたが、実際どういった事なのか。

例えば『ちょっと体重が気になってきたからダイエットしよう』と思ったとしましょう。

健康面から見てもダイエットするのは正しい行動(合理的)ですが、いざ始めようとすると誘惑に負けて”明日から…”と先延ばしにする可能性もあります(不合理的)。

このようにヒトは場合によっては不合理な行動を取る事もある、という事を加味した上で研究を行うという事です。

本書では筆者らが行った多くの実験とその結果を掲載しています。

その実験結果は筆者の言葉を借りるならば”ふつうの経済理論が想定するより、はるかに合理性を欠いている”ものです。

ですが”その不合理性はでたらめで無分別なものでは無く、規則性があり予測できるものである”とも述べています。

本書の実験結果を知ることで自分自身の行動を振り返る切っ掛け、不合理性からの脱却が出来るかもしれません。

不合理性を予測できるならばそれを逆手に取った活動が出来るかもしれません。

また単純に『心当たりのある結果』が目白押しなので、雑学が好きな方にもオススメです。

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読んで思った本書のポイント

1, 需要と供給、相対性

本書ではまず始めに経済の肝ともいえる『物の価格』についての実験とその結果について述べています。

その一つが『需要と供給』であり、もう一つは『相対性』の実験です

例えば『需要と供給』の関係ですが、これは経済の初歩の初歩として多くの人が知っているものでしょう。
(需要と供給のバランスで価格が決まる、要はレアなものほど高価である、という事)

しかし『希少だから高い』というその意識は、『需要と供給』の関係とはまた別の事項から影響を受けているとしたらどうでしょうか。

レアメタルなど現代生活に必須な物質等、実需に関係しているものは別として、宝飾品などがその価値を得たのは『希少だから』という点から始まったのでしょうか?

本書では宝飾品である『黒真珠』の実例を挙げ、その価格が決まったプロセスを述べています。

そのプロセス等々詳細は実際に本書を手に取って確認して頂きたいところですが、簡単に流れを挙げると…

  1. 黒真珠は当初は全く売れていなかった
  2. そんな中でとある広告・マーケティングを行ったことで『高価』という価値がついた
  3. それからは『黒真珠=高価』という図式が成り立ち、今に至る

といった3つが大まかな流れとなり、上記の内『2』がそのモノの価値を決める最も重要な点と記載されています。

また人は『あらゆるものを相対的に判断する』とも本書では述べています。

例えば何かを買う際に”とある品物が高いのか安いのか”、”お買い得か否か”といった事は誰でも考えるでしょう。

この場合、判断している基準(ex, 他の店の価格、前に買った時の値段etc)は人それぞれだと思いますが、結果的に『相対的な判断を下している』と言えます。

“そんなこと言われなくても分かっている。だからそれがどうした?”と思われる方もいらっしゃるでしょう。

上の例はあくまで『相対的な判断』の一例なだけであって、判断自体は買い物だけに行われるものではありません。

何かを見て、聞いて、触れた際に感じるあらゆる感情や考えは、無意識だろうと何かを基準にして考えているハズです。

つまりヒトはどんな状況であろうとも”基準”を設定して考える生き物である、という事です。

なので、この基準を認識し、ある程度操作することが出来れば…

  • 企業側:より多くの品物を売ることが出来るかもしれない(基準が高めに設定出来れば、より高値で売れやすくなる)
  • 個人側:よりお得に買い物が出来るかもしれない(不当に設定された基準に騙されず品物を購入できるかもしれない)

といったことが出来るかもしれません。

また個人側がからすれば比較しなくなる or しにくくなるという事は『自身の状態に優劣が付きにくくなる』為ストレスも減るかもしれませんね。
(逆に上のハードル、といったものが見え難くなる事から上昇志向というか、研鑽を行う気概も減るかもしれませんが…)

本書ではこういった『需要と供給関係』や『相対的な判断を下すための基準の発生や変化』等を解説しています。

勿論本書の内容があらゆる条件に当てはまるわけではありません。

しかし、それでも日々目にする広告の見方が変わったり、自身の行動を省みる一助になることは間違いないでしょう。

2, ゼロ円の価値

『只より高い物はない』

この言葉は大抵の人が聞いたことがあるでしょう。

意味としては『タダで何かを貰ったりすると、代わりに物事を頼まれるetcでかえって高くつく』といったもので、要はそうそう美味い話は無い、といった感じです。

本書ではこの『タダ=0円』の力についても述べられています。

掲載されている事例の方向性としては…

  1. 価格をゼロ円にする事でどういった効果があるのか
  2. 元々がゼロ円だったものに価格を持たせるとどうなるのか

といった形で大まかに2方向に分かれています。

1に関しては”値引き等でゼロ円になったモノ”と捉えれば想像しやすいでしょう。

この場合ゼロ円ならば失うものがない、という事はどう捉えても”お得”な取引になり、不合理性は無いのでしょうか?

まぁ、本書で触れられているという事は”不合理性が発揮されることもある”という事なのですが…

このケースは『合理的≒モノの価格差』という観点から見た場合不合理に映る、といったものです。

例えば…

  1. 100円のモノが無料(0円)になるクーポン
  2. 150円のモノが40円になるクーポン

といった2種類のクーポンがあった場合、合理的に考えれば2番の方がお得(110円引き)です。

しかし場合によっては1番の方を選んでしまう事もあるといった感じです。

上記の例はあくまで1例ですが、本書では他にも『無料の魔力』を検証する実験を多数掲載しています。

では『元々がゼロ円のだったものに価格を付ける』というのはどういったケースか。

これは社会奉仕(ボランティア)等の善意で行っている事にお金を支払うとどうなるか、といった方向性になります。

タダで行っていたことでお金が手に入る、という事になるのですが、この場合はどういった影響が出るのか?

実験内容やその結果等々の詳細は本書を手に取って確認して頂きたいのでここでは省きます。

ですが実際は『対価を支払うことで無償の頃よりも効率が落ちる』ケースもあるという事です。

合理的に見るならば『行為に対する対価を貰える=効率が上がる』はずですが、この結果の背景には市場原理とは異なる『社会規範』が顔を覗かせているようです。
(社会規範とは『慣習や法といった人と人の関わり合いに関連する規律、社会生活を営む上で守るべき規律、道徳』といったもの)

本書ではこういった経済を語る上では外せない、特異な価値である『無料、タダ、ゼロ円』についても多く解説しています。

本書を読んだからと言ってゼロ円の魔力に抗うことは出来ないかもしれません

また抗ったから『よりお得なのか』と言われれば何とも言えません。

ですが、これらがどれだけヒトに作用するのかを知ることは、不要な取引を寸での所で止める事に繋がるかもしれません。

また企業側からすれば、無料の効果を利用する事でより効率的に利益を上げる事が可能になるかもしれません。

何れにしろ『無料、タダ、ゼロ円』という言葉はヒトの判断や活動に大きく影響を及ぼす魔法の言葉である、ということです。

3, ヒトの心理を見る実験

行動経済学は『経済学』と『ヒトの心理』を合わせた学問、と本記事の始めに記載しました。

その為、本書では随所にその『ヒトの心理』に焦点を当てた実験が掲載されています。

例えば…

  • 無料になったキャラメル実験
    (1個=1セント or 無料で消費行動の変化を見る※2,ゼロ円の価値に関係)
  • レポートの締め切り実験
    (先延ばしを防ぐにはどうすれば良いか)
  • 所有意識、保有効果の確認実験
    (自身の持ち物を過大評価するものなのか)
  • 扉ゲーム実験
    (選択の自由による選択の難しさ)
  • 予測の効果、価格の効果確認実験
    (予測する事でヒトは捉え方が変わるのか、プラセボ効果はあるのか)

といったジャンル・方法の実験等々と結果が掲載されています。
(実験内容は本書のネタバレになるので省きます…)

本書ではこういった実験の結果から『ヒトの心理』の動きを推察していくのですが、実験が単発で終わることはほぼありません。

あくまで本書に掲載されている実験は著者らが実際に行った実験、つまりは研究結果の一部分です。

よって1つの実験が終わった際、目的を遂げるにはデータが不足しているならば、更に踏み込んだ実験が行われていきます。

本書の面白さの一つはこの『実験の繰り返しで明かされていく心理的な動き』でしょう。

無意識的に行っている行動が多数の人間に当てはまるならば、それは”自身も行っている可能性が高い行動”だと思います。

その行動が不利益をもたらすものならば、それを修正する手掛かりが本書にはあるかもしれません。

何せ本書には『条件を変えて繰り返された実験とその結果』が掲載されている、つまり何が要因でその結果が得られたかが筋道立てて語られています。

なので、得られた結果(≒多数の人間に当てはまる無意識の行動)から外れたいならば、どこを変えるのが効果的かを教えてくれるはずです。

4, 身に覚えのある不合理性

本書は15の章から成り立っていますが、それぞれ一つのテーマについて述べられています。

その中では筆者らが行った複数の実験や例が掲載されていますので、解説数はテーマ(章数)の数倍になります。

幅広いシチュエーションを網羅しているので、少なくとも幾つかの例で『身に覚えがある』と感じる事でしょう。

この”実験結果や例が自分にも当てはまる”というのが本書のウリであり、肝であることは間違いないと思います

ですが”当てはまっているから面白い”で止まるのではなく、そこから1歩踏み込む。

筆者の言葉を借りるなら…

ここから(そして社会科学一般から)真の価値を引き出すには、実験であきらかになった人間の行動の原理が自分の人生にどうかかわるか、読者であるあなた自身が少し考えてみる必要がある。そこで、一章読みおえるごとに立ちどまって自問することを提案したい。

早川書房 2013/8/25 第一刷発行 予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 ダン・アリエリー(著)、熊谷淳子(訳) 24P

本書を読んで理解した or 自覚した事をどう活かしていくか考えて、場合によっては実践する事で本書はより価値を増すことでしょう。

例えば『自己ハーディング』などは少し意識するだけで、日々の生活が変わる可能性があります。

そもそも『ハーディング』とは『自分の前に他人がとった行動を元にものごとの善し悪しを判断して、それに倣う』といったものです。
(例:行列が出来ているレストランという事はこの店は素晴らしいに違いない、と判断して列に加わるといったもの)

対して自己ハーディングとは『自分の前に取った行動を善し悪しの判断基準としてしまう』もので、いわゆる”習慣化”につながるものです。

健康の為に運動習慣をつける、といった間違いなくプラスな習慣もある事から習慣化自体が悪いことではありません。

ですが中には”前にもやったから”という意識から行ってしまう、本当は不要な習慣やマイナスな習慣もあるハズです。

本書を読んで『身に覚えがあった≒普段の何気ない行動を自覚』した時、その中にマイナスな習慣(不合理)があるならば、それを修正する切っ掛けを得られたと言えるのではないでしょうか。

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まとめ

本書は経済学と心理学を合わせた『行動経済学』について述べられています。

ですがその内容は数式などの解説ではなく、筆者らが行った数多くの実験とその結果の解説に割かれています。

大多数の人は本書を読むと『身に覚えがある』例が出てくることでしょう。

意識していなかった時は何も感じなかった行動も、成文化されると不合理だと思ってしまうかもしれません。

こういった”身に覚えがある不合理性”の不思議を楽しむだけでも良いでしょう。

そこから一歩踏み込んで意識改革などしても良いかも知れません。

また、本書はマーケティングにも通じる部分が多い事から、そちらの方面に興味がある方にもオススメ出来ます。

様々なモノの値段、目に入る広告、自分の習慣、その多くに”予測できる不合理性”が関わっている。

読み切った後は、どんな楽しみ方だったとしても自身を取り巻く環境をちょっと変わった視点で見させてくれる、そんな1冊です。

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