思考実験でちょっと深く考える【100の思考実験: あなたはどこまで考えられるか】(3冊目)

今回ご紹介する書籍はこちら

『100の思考実験: あなたはどこまで考えられるか』
ジュリアン・バジーニ(著)、河合美咲(イラスト)、向井和美(訳)
紀伊國屋書店 2012/3/1 発行

本書を特にオススメしたい人

  • 考えるのが好きな方
  • 今よりも考え方をちょっと深くしたい方
  • 物事を俯瞰的にとらえたい方
  • パラドックスや哲学に興味がある方
  • 雑学が好きな方
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目次

はじめに(本書の紹介)

今、Aさんが乗っていた船が沈没したとしましょう。

Aさんは海へ投げ出されましたが運良く木の板に掴まることが出来ました。

ですが、掴まった板にBさんが近づいて来ました。

掴まっている板は2人分の重みに耐えきれず沈んでしまうでしょう。

Aさんは非道と知りながらもBさんを突き飛ばし、生還しました。

さて、この場合Aさんは罪に問われるべきか否か。



このような極端な条件や現実には出来そうに無い条件を設定し、頭の中で考える実験を『思考実験』と呼びます。

上の例は『カルネアデスの板』と呼ばれる有名な思考実験ですが、人によってAさん有罪派と無罪派に分かれることでしょう。

恐らく道徳・倫理的な部分が争点になると思われますが、思考実験はこのように問題の中のある一部分を抽出して、その影響を検討することができます。

考えるだけで実利が無い、と感じる方もいると思います。

しかし思考実験の目的は焦点を当てる問題を絞り、考えることにあるのです。



本書では100個もの思考実験を挙げており、その考え方を筆者が解説しています。

その問題に対してどういった立場になるかは、その人の捉え方次第でしょう。

ですが、読むことで逆の立場も考えさせてくれる、そしてあなたの視野を少し広げてくれる、そんな1冊です。

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読んで思った本書のポイント

1, 100の例

テセウスの船アキレスと亀水槽の中の脳といった有名なものから、聞いたことのないものまで、本書では100個もの思考実験が挙げられています。

100個は数が多すぎる、読むと疲れそう、と感じた方もいるのではないでしょうか?

ですがそこは心配無用です。

というのも、各項目は実験内容と考え方で3P程度と非常にコンパクトにまとまっているのです。

そしてこの『コンパクトさ』が本書のオススメしたい最大のポイントです。



思考実験は考えることこそ重要ですが、読み進める時に疲れて考えが纏まらないのは本末転倒。

しかし、コンパクトさのお陰で一つ一つを疲れずに読み、考えることが出来るのです。

仮に読むのを止めても、各実験は独立しているので後で読み直す時もすぐに内容を把握することが出来ます。

本書の構成は『考える』ことに主眼を置くならば、非常にとっつきやすい形式なのではないでしょうか。

2, ストーリー

本書では各実験は何らかの『ストーリー』に沿って述べられています。

本記事の冒頭で述べた通り、思考実験は『極端な条件や現実には出来そうに無い条件』を設定し、焦点を絞って考えることが目的です。



そんな中でストーリーは不要、もしくは作りようが無いのではと考える方もいるでしょう。



しかし、カルネアデスの板のような『緊急避難』のことを日常生活で考えることはあるでしょうか?

日常生活ではあまり考えない問題に、更に現実的ではない条件を設定するということは正に『想像もしなかった状況』を想定する事ではないでしょうか?

いきなりそんな状況を考える、と意気込んでも考えを深めることは中々難しいのではないかと思います。



そう考えるとストーリーを組み立て、登場人物を設定し、非日常的な問題を『想像しやすいシチュエーション≒例え話』に落とし込むことは、本書を読む上で大きな手助けになっているのかもしれません。

3, 思考実験の答え

本書は哲学者を紹介する参考書ではないし、昔ながらの難問への答えを集めた本でもない。むしろ、読んだ人がさらに考えを深められるよう、挑発したり刺激したりすることを目的としている。

100の思考実験 ジュリアン・バジーニ(著)、河合美咲(イラスト)、向井和美(訳) 16P

著者のこの言葉の通り、本書ではあくまで思考実験の考え方を挙げているのみであり、その明確な答えは述べられてはいません。

思考実験ではカルネアデスの板のように『問題の中にある考える対象を絞る』ため、対立する2つの意見に分かれるケースが多くなります。

ですが、どちらの意見でもそこに至った考え方にはキチンとした理論があるはずなので、どちらかの意見が間違っているとも言い切れないのです。
(設定を追加したり、新たな理論や法則が見つかり現実的に説明がついてしまうなら別ですが)



思考実験の目的は再三述べたように『考えること』にあり、本書の目的は著者の言葉を借りるならば『読んだ人が考えを深める』ことにあります。


普段想像しないことを考える際『この問題はこういった解釈をする』といった道筋があると、あぁそうなのね、と納得し考えを止めてしまうことはないでしょうか?

また、そこから反対の意見や考え方を素直に受け入れることができるでしょうか?

思考実験の最中にそうなってしまったならば、それは目的を見失ってしまった事になります。


故に、本書では自分なりの解釈を見つける上で枷となる『明確な解釈や答え』をあえて出さず、考え方を述べるに留めているのではないでしょうか。

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まとめ

本書では題名の通り100個もの思考実験を挙げていますが、そのどれもがコンパクトにまとめられています。

また実験内容もストーリーが作られている為『何に焦点を当てているか』が分かりやすく、非常に考えやすい構成になっていると言えるでしょう。

解説も読者の考えを導く役割を果たしていますが、その意見を押し付けているわけでは無いので読者自身が考える余地を十分に残しています。

これらから本書は思考実験や哲学、パラドックスに興味がある方や、考える力を付けたい方、広い視野で物事を考えたい方などに特にオススメ出来ると思います。

但し、ただ読んだからと言って考える力が深まったり、広い視野を獲得できるわけではありません。

本書に掲載されている思考実験を実際に考え、自分とは反対の意見も想像することでそれら能力を付ける練習になるのではないでしょうか。


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