古代から近代までの戦略・戦術解説【戦争学】(4冊目)

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『戦争学』
松村 劭(著)
文藝春秋 1998/12/16発行

本書を特にオススメしたい人

  • 戦術、戦略といった単語に興味がある方
  • 戦史、歴史に興味がある方
  • 勝つための方策、考え方に興味がある方
  • ファランクス、レギオン等の単語に興味がある方
  • 雑学が好きな方
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目次

はじめに(本書の紹介)

歴史に詳しくない方でもアレキサンダー大王やチンギス・ハン(カン)、ナポレオンといった偉人を知っていることでしょう。

彼らは世界史として後世に残る歴史を作りましたが、何故それほどの偉業を成し遂げることが出来たのでしょうか?

確かに本人のカリスマ性やその時の世界情勢、更には時の運など様々な要因が考えられます。

ですが、彼らだけではなく歴史上世界を席巻した勢力は『相手を打倒する』ことで勢力を広げ、その行動を知らしめてきたことは間違いないでしょう。

その勢力が広く知られ、無視できない力を持ち、世界を動かしたからこそ歴史に名を連ねることが出来たのですから。



本書では古代から近代までの戦闘の歴史≒戦史を取り上げ、各時代の代表的な会戦やそれに関わる偉人の戦い方等を検証しています。

過去の出来事、それも『戦い』を知って何になるのか、と思う方もいらっしゃるでしょう。

確かに『その出来事』を暗記するだけでは意味が無いかも知れませんが、打倒に至るまでの背景を知ることは無駄ではないと思います。

現代でも市場シェアの奪い合いなどの戦いはあらゆる場所にあり、つまるところ勢力を広げるには『相手を打倒して勝利する』必要があるのです。

本書で得られたことがそのまま使えるとは限りませんが、どうすれば勝てるのかを考える上で参考になることは間違いないでしょう。

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読んで思った本書のポイント

1, 戦いの要素

まず『戦略』と『戦術』について、本書では以下のように解説しています。

戦略は、戦場における勝利のためのリスクを最小限にするように事前に準備し、また戦場における勝利の果実を最大限に活用する策略

戦争学 松村 劭(著) 12P

戦術は、戦場において最大のリスクに挑戦し、最大の勝利を獲得するための術

戦争学 松村 劭(著) 12P

企業活動に例えるならば戦略は『シェアを獲るための前準備≒マーケティングや他社製品分析etc』であり、戦術は『営業活動方法』といったところでしょうか。

本書では様々な戦術を検証していますが、この戦術を理解するには『戦闘教義(バトル・ドクトリン)』という言葉を知る必要があり、これは以下のように解説されています。

戦場に臨む軍は、広く応用性がある合理的な一つの「戦い方」を持っている。これを「戦闘教義」という。相撲や柔道の基本技のうち、選手が身に着けている得意技に相当しよう。

戦争学 松村 劭(著) 13P

こちらも企業活動に例えるならば『その企業が得意な製品分野や加工方法、特許を持っている技術』が当てはまるでしょう。


これらを総合すると『勝つためには有利な状況を整えて、得意技で戦う』といった簡単な結論になりますが、戦いには更に複数の要素が関わるため単純にはいきません。

真正面からぶつかり合うのか、弱い所を突くのか、相手をかく乱してから攻撃するのか、そもそも相手が意図しない所で争うのか…といったように有利な状況を作ってからも彼我の力量差を考え、最大の利益が得られるように動くことが重要になるのです。



本書ではこの他にも戦う上で重要な力の要素や、狙いどころの考え方なども『基礎知識』として解説していますが、ここが『勝つための方策、考え方に興味がある方』にオススメしたいポイントになります。

ページ数としては他部分よりも少ないのですが、この部分だけでも考え方の幅を広げる有用な情報が多く記載されていると感じました。

というのも『はじめに』で述べたように、平和な日本でも色々な姿で戦いは起きています。

その戦いの一つをピックアップして考えると、本書で解説されている要素が形を変えて多々見受けられるのです。

このように『戦いの要素』を知ることで、普段のニュースや政治がちょっと違う視点で見れるようになるかもしれません。

2, 古代から近代までの幅広さ

本書では基礎知識の解説の後、実際に歴史上の会戦などについて解説を行っています。

その範囲は古代マケドニア、ローマ帝国などから第2次世界大戦前後までと非常に幅広く、特定の時代や人物に焦点を当てていないことが特徴の一つでしょう。

一つ一つはそれを専門に扱っている書籍よりも情報が少ないかも知れませんが、何故勝てたのか、その要因はどこにあったのかは十分に説明されていると思います。

更に古代ではマケドニアのファランクスローマ帝国のレギオンといった陣形、また歩兵や騎兵、砲兵といった兵科の隆盛も時に図を用いて解説が入るので理解しやすくなっています。



更に本書では陸戦だけではなく海戦も採り上げており、『海戦も含めたその地域において勝つための要素』も解説しています。

というのも昔は海戦のみで一連の戦いが終わることはなく、その後陸上を占拠する必要があったことから陸海の連携が重要だったためです。



歴史上の戦いの名前は知っていても、何が勝敗を分けたかを知っている人は少ないかも知れません。

勝因は何か、また時代の移り変わりと共に何が変化したのか。

本書は絶えず変化していく情勢へ『合わせ、変化する』ことの重要性を再認識させてくれることでしょう。

3, 戦闘の検証

本書では『複数の得意技を持ち、異なる敵に使い分けることは現実的には不可能』としています。

これは実際に現場で行動する人間の能力を超えるためでもあり、そういった装備は器用貧乏になりがちで決定力に欠けるから、という理由からです。

サラリーマンを例にすると『他部門の仕事も掛け持ちして全て満足するような成果を挙げる』ことは難しい、と考えれば分かりやすいと思います。

誰にでも、どんなものにでも向き不向きはあるのでそれに合わせる必要がある、という事ですね。



では、一つの得意技に固執するべきなのか、というとそうでもありません。

どんなに強力な得意技でも、使う状況が1パターンしかないならば対策しやすいのは簡単に想像が付くのではないでしょうか。

つまり戦闘教義に適した戦術、戦略を組み上げる、『得意技を使うことで勝敗が決まるような状況に作り替える』ことが重要となってくるのです。



歴史上の名将は、それまで強大な力を持っていた相手を打ち破ったからこそ『名将』と呼ばれるのでしょうが、その戦い方は『相手を研究し、その弱点を突ける新たな戦闘教義を作り上げる』ことから始まっています。

本書ではその戦闘教義がどのように考案され、どう運用されたかを検証しています。

また、敗北した側でも同様の解説があり、対比することで戦術、戦略の差や戦闘教義のコンセプトの違いを把握しやすい点もポイントでしょう。

何が決定的な差になったのか、戦闘教義の差もあるでしょうが、それを活かす状況に持っていく術こそ学ぶべき部分なのかもしれません。

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まとめ

本書では戦争学という題名の通り、軍事を通して戦術や戦略を検証、解説しています。

その範囲は古代から近代までと幅広く、陸戦だけではなく海戦も採り上げています。

そんな中で新たに興ったもの、廃れたものにはそれ相応の理由があり、その理由を作り出したものこそ『新たな戦闘教義』であることを教えてくれます。

また、戦闘の検証だけではなく『戦うための要素、勝つための要素』といった基礎知識といえるものも解説していることから、歴史好き以外でも視野を広げるのに役に立つ情報が述べられていると言えるでしょう。

得た知識がそのまま何かに活かせるとは言えませんが、視点を変え、相手のどこを突くかといった『今までしたことの無い戦い方』を考える上では参考になる一冊であると思います。



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